2012年12月28日金曜日

本年もお世話になりました。

本日で、今年の乳腺外来は終了です。

今年の乳がん手術例は192件でした。
乳腺チームの頑張りに感謝したいと思います。

来年も、「神戸から乳がんで苦しむ人をなくす!」 をモットーに力を合わせていきますので、よろしくお願いします!!

2012年12月13日木曜日

乳がん発症後の妊娠


今週のカンファレンスでは乳癌治療後の妊娠について議論しましたが、それに関する文献がちょうどJCOearly releaseにありました。
 
 
 
 

・乳癌既往のある(妊娠可能年齢)患者の40~50%は妊娠を希望している。

・しかし、実際に妊娠するのは4~7%

・以前このグループが乳癌発症後の妊娠は41%の死亡リスク減少があると報告したが、それはいわゆる “healthy mother effect” あろうか?

・今回、selection biasをできるだけ排除したretrospective cohort studyを行った。

・結果、少なくとも妊娠後5年のER陽性乳癌再発率は非妊娠群と変わりなし。

・今後、The Breast International Group North American Breast Cancer Group global prospective studyを計画中。

2012年12月8日土曜日

ホットフラッシュについて


ホットフラッシュに有効な薬について

ホットフラッシュはホルモン療法に伴う副作用、中でもタモキシフェンの副作用としては一番多い症状です。エストロゲンの減少によって自律神経が乱れ、温度調節中枢が適切に働かなくなり起こると考えられます。
自律神経失調症状の治療にはSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)やSNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬)が有効ですが、タモキシフェンとSSRIは肝代謝薬物酵素CYP2D6を介し薬物相互作用があります。中でもパロキセチンはタモキシフェンとの併用により、乳癌による死亡リスクが上昇することが実証され、併用禁忌となっています。
一方SNRIはCYP系を介さない,もしくは影響が少ないため使いやすい薬剤と考えられ、海外ではVenlafaxineが、乳癌患者のホットフラッシュ治療に使用されています。ただ、残念ながらこの薬、日本ではまだ未承認です。

現在日本では2種類のSNRIが承認されています。トレドミン(ミルナシプラン)とサインバルタ(デュロキセチン)です。
トレドミンはVenlafaxine同様、肝代謝薬物酵素に対して誘導・阻害を認めません。前立腺癌のホットフラッシュに対して、トレドミンは有効との報告もあります。
一方サインバルタは弱いながらもCYP1A2とCYP2D6が関与します。タモキシフェンとの併用で考えるのならトレドミンの方が使いやすいと言えます。
SNRIはセロトニンへの作用に加えノルアドレナリンへの作用もあるので、やる気や気分を向上させる効果が期待できます。

使いやすいとは言え、緑内障、心臓病、てんかん、肝臓病、腎臓病などの人に慎重投与であることは留意すべき点です。また他の抗うつ剤、睡眠剤などとの併用にも気を配る必要があります。

併用薬による注意が必要な患者には、漢方薬の桂枝茯苓丸と加味逍遥散が使いやすいと考えます。体質による使い分けは以下の通り。

◎桂枝茯苓丸・・・理血法:血瘀(血液の循環停滞)を除去する
 桃仁、牡丹皮、赤芍、茯苓 、桂枝
 ・比較的体力のある人
 ・足が冷え、頭がのぼせ、肩こりや頭痛がある症例

◎加味逍遥散・・・理気法:気滞(機能の停滞、うっ積)を除去する
 柴胡 芍薬 蒼朮 当帰 茯苓 山梔子 牡丹皮 甘草 生姜 薄荷
 ・比較的体力の乏しい人
 ・のぼせ、突然体が熱くなる、ヒステリー、抑うつ、不眠や気分がふさぎ込む症例
 *甘草を含む漢方薬やグリチルリチンを含む薬との併用は注意!

補足ですが、中医学におけるヒステリーは、精神的ストレスで肝気がうっ滞し、肝での新陳代謝がスムーズに行われなくなり、大脳への酸素補給や血液循環が滞っておこる心身症状と考え、精神状態の問題とはとらえません。


<参考>
Daily Med  http://dailymed.nlm.nih.gov/dailymed/about.cfm
Europe PubMed Central  http://europepmc.org/
独立行政法人医薬品医療機器総合機構 http://www.info.pmda.go.jp/
がんサポート情報センター http://www.gsic.jp/
「やさしい家庭中国漢方講座」上・中・下 家庭中国漢方普及会

2012年11月28日水曜日

遺伝性乳癌と局所再発

10回日本乳癌学会近畿地方会で遺伝性乳癌と手術後の局所再発に関する発表をしてきました。

 BRCA1BRCA2遺伝子のいずれかに病的変異が存在する場合,乳癌および卵巣癌の発症リスクが一般集団より高くなり,乳癌の生涯発症リスクは6574%,卵巣癌については,BRCA1遺伝子変異を持つ場合3946%,BRCA2遺伝子変異を持つ場合1220%とされている。
(乳癌診療ガイドラインより)

・乳房温存術後の局所再発率に関する報告。
      
        10年での同側乳房内再発リスク ・・・・・・遺伝性乳癌27% vs 散発性乳癌4%

Garcia-Etienne CA et al: Ann Surg Oncol2009 Dec;16(12):3380-7.Breast-conserving surgery in BRCA1/2 mutation carriers: are we approaching an answer?
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed?term=Garcia-Etienne%20CA%20et%20al%3A%20Ann%20Surg%20Oncol2009%20Dec%3B16(12)%3A3380-7.Breast-conserving%20surgery%20in%20BRCA1%2F2%20mutation%20carriers%3A%20are%20we%20approaching%20an%20answer%3F

     10年での同側乳房内再発リスク: 11.5%
     化学療法で77%のリスク減少

Metcalfe K et al: JCO 2004 15; 22: 2328-35 Contrarateral breast cancer in BRCA1 and BRCA2 mutation carriers
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed?term=Metcalfe%20K%20et%20al%3A%20JCO%202004%2015%3B%2022%3A%202328-35%20Contrarateral%20breast%20cancer%20in%20BRCA1%20and%20BRCA2%20mutation%20carriers

 
      乳房温存 vs 乳房切除 23.5% vs 5.5% (P<0.0001)
         乳房温存+化学療法 vs 乳房切除 11.9% vs 5.5% (p=0.08)
              生存率に差はなかった。 

Pierce et al: Breast Cancer Res Treat, 2010 june: 121: 389-398, Local Therapy in BRCA1 and BRCA2 mutation carriers with operable breast cancer
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed?term=Pierce%20et%20al%3A%20Breast%20Cancer%20Res%20Treat%2C%202010%20june%3A%20121%3A%20389-398%2C%20Local%20Therapy%20in%20BRCA1%20and%20BRCA2%20mutation%20carriers%20with%20operable%20breast%20cancer

 
NCCNガイドラインにおける乳房温存療法の禁忌

        絶対禁忌
            胸壁への放射線治療の既往がある。
     –      広範囲に悪性微細石灰化を認める。
     –      乳房の整容性が保てない。
     –      断端陽性。

       相対禁忌
     –      皮膚に関係する活動性の膠原病がある。
     –      腫瘍径>5cm
     –      遺伝性乳癌である、あるいは遺伝性乳癌がうたがわれる。

 

 

2012年11月27日火曜日

2012 乳がん看護実践セミナー

11月10日(土)午後からポートアイランド内の兵庫医療大学オクタホールにて
上記のセミナーが開催されました。

今回のセミナーでは『術後初期治療とアドヒアランス』 という大きなテーマがありました。
アドヒアランス・・初めて聞かれる方も多いかと思います。

【アドヒアランス】
患者が積極的に治療方針の決定に参加し、その決定に従って治療を受けること         
(日本薬学会より)

・がん患者にとって自己管理の目標は「再発しないこと」「生きること」
・再発患者にとっては治療の継続が生存の可能性を高める一つの手段

患者にとってアドヒアランスはよりよい生活を送るために不可欠であり、
私たち医療者は、患者のアドヒアランス向上につながるセルフケア支援を行う役割を担っています。

特に、乳癌領域では、治療が長期にわたりそして、乳癌のサブタイプにより1人1人の治療が異なる場合も多くあります。
私たちは患者に見合った治療戦略を考え、患者に分かりやすい説明や情報提供を行うこと そして 患者自身が納得した治療を行えるように支援していくことが必要であるということを再確認しました。

話はそれますが、10月20日には神戸新聞松方ホールで
ピンクリボンシンポジウム2012が開催されました。
そこでは、甲南病院の宮下先生、京都大学准教授の佐治先生が 乳癌検診の話や、乳癌の新しい治療薬について講演をされました。

一般市民、患者さんもこのような講演を聞いて、治療についてや新薬について勉強しているのだなと改めて驚きました。
私たちも 患者さんによい情報が提供できるように 日々勉強中です!

また、治療における副作用出現に対してはリスクを吟味してアドバイスが行えるよう、チームで関わっていく必要があると感じました。
セミナーでは当院がん専門薬剤師の北田徳昭さんが ミニレクチャーとパネリストとして講演してくださいました。
当院の化学療法に関しては 腫瘍内科医、専門の薬剤師、がん化学療法認定看護師 など専門分野のスタッフが揃っており、人的環境に恵まれていると思います。

また、当院では週1回、乳腺外科と外来化学療法センターでモーニングカンファレンスを行い化学療法中の患者の情報交換や、勉強会を行っています。
今後も乳腺外科の患者さんが 「ここで治療をうけてよかった!」と思える治療環境を提供できるように このブログのサブタイトルにもありますように~最高のチーム医療~をめざしていきたいなぁと思っています。

とはいえ、ブログを書いている当の本人は、只今育児休暇中で 乳腺外来から離れています。
復帰の際は みなさんのお力になれるよう休暇中はしっかり充電しておきます。



2012年11月13日火曜日

第10回兵庫乳癌薬物療法研究会


 ①相原智彦先生講演
「真のエンドポイントでエビデンスを洗い直す」
・PFSがOSのサロゲートになるかどうか? 大腸癌ではサロゲートになりうるが、乳癌では??
・臨床試験の結果の解釈について・・・・それぞれの立場(研究者、企業、患者、臨床医など)でプレゼンの内容が違うので、解釈に注意が必要。
・術前化学療法における、pCRの意味・・・・pCRは予後因子だが、pCR rateが高い治療が標準治療になりえるかどうかは別。FDAのaccelerated approval はただの仮免許。その後の、予後や副作用の結果が出て、初めて標準となりえるかどうか分かる。承認取り消しも十分あり得る。
・primary endpointのPFSよりsecondary endpointのOSの方が重要。

②渡辺亨先生講演
「乳癌診療2013年の方向性を考える」
・gene profileを用いた、個別化治療のお話。
・St. Gallen2013のQuestionのお話。(2012とあまり変わらなさそう・・・と)
 
余談・・・・
 BOLERO-2ではOSに差が出なかったらしい・・(SABCS2012で発表される?)
FNマネジメントについて
 まず乳癌化学療法でG-CSFは使わない。予防的抗菌薬も1コース目から使うことはしない。患者さんを真摯に診て、肌つやを見れば必要かどうか分かる。
— 場所: 生田神社会館

2012年11月1日木曜日

QALY


QALY

 今週の化学療法カンファレンスでは、QALYについて議論しました。
QALYとはQuality Adjusted Life Yearの略です。

「乳腺腫瘍学, 金原出版2012」には「生存年数に健康状態評価値で重み付けをした指標で、健康状態評価値は0が死亡、1が完全な健康と定義された尺度で表される。」と記載されています。

例えば、再発乳癌で抗癌剤治療を続けている患者さんがいるとします。抗癌剤が奏効して5年生存を達成しましたが、とても副作用が強くて健康状態評価値が0.4しかありませんでした。この場合、QALY5×0.42で、2QALYとなります。健康な人の2年と同じでしかないということです。

健康状態評価値の設定をどうするか、難しいところはあるかもしれませんが、医療経済の面からも非常に重要なアウトカム指標だと思います。

1QALY増加に対していくら払うのか?国内の調査では500~600万程度が平均的な支払意志額の閾値だそうです。また、英国のNICEでは1QALY増加のための増分費用が3万ポンドを超えるような薬剤は承認されないことも多いと。

これからの我々はEvidenceScienceを作り、それを理解し、それに基づいた医療を提供する責務があります。そして、例え臨床の最前線にあってもmacro的な視野のもとにcost effectivenessなど社会全体を考えた診療を行うべきだと思います。しかし、それは最低限のラインとしてすべきことであって、それを超えた患者さんのQuality of Lifeと本当のendpointは何かを追求した医療を行うことが、真のtailor-maid therapyであり、それができるチームになろうと皆で固く誓いあいました。

2012年10月24日水曜日

本日の化学療法カンファレンス

今日のカンファレンスは、G-CSFの使用方法について、知識の整理と確認をしました。

臨床腫瘍学会のFNガイドラインより。

・FN発症率が20%以上(高リスク)の薬物療法時にはG-CSFの予防投与が推奨される。
 (ただし保険適応なし)
推奨グレード A

・すでに発症したFNに対して一律に治療的なG-CSF投与を行うことは推奨されない。重篤化する危険因子を有する症例において検討することは妥当である。
推奨グレード C2



2012年10月20日土曜日

乳癌におけるandrogen receptor

乳癌の70%がandrogen receptor(+)
AR陽性率
Luminal A 90%以上
Luminal B ~70-90%
TNBC ~10-30%
HER2 ~60%
ER(+)/HER2(+), ER(-)/HER2(+)のどちらでも同じようにAR expressionがみられる。
ER(+)/HER2(+) and ER(+)/HER2(-)ではAR(+)ならgood prognosis。
ER(-)ではAR expressionがHER2 overexpressionと関係している。

ER(-)/HER2(+)の多くにARが発現しているが、TNBCは10-30%と少ない。ER(-)に関しては、AR overexpressionがtumor proliferation↑の方向に働いているかも。
(WNT and HER3 signaling pathwayを通じてWNT7BとHER3をupregulateするらしい)
もしかしたらAR antagonistはHER(-)/AR(+)/HER2(+)に対するHER3 pathwayの新しいターゲットになるかもしれない。


参考文献
http://m.annonc.oxfordjournals.org/content/early/2012/09/27/annonc.mds286.full.html?papetoc#ref-34

2012年10月17日水曜日

Controlling Iron in Breast Cancer

薬剤部の同僚から、教えてもらった文献を紹介します。

"Ferroportin and Iron Regulation in Breast Cancer Progression and Prognosis"

USの Wake Forest University Baptist Medical Center が 2010年「Science」誌に投稿した記事です

Ferroportinは細胞内から鉄を取り除くタンパク質で、腫瘍の発達を遅らせることが可能かもしれない。という予測がされています。

研究チームは800人程の乳癌患者のデータを元にFerroportinレベルと腫瘍との関係性を調査。
その結果、乳房腫瘍ではFerroportinのレベルが、正常な組織よりもはるかに低く、また、進行が速い部位ほどフェロポーチンのレベルが低いことがわかったそうです。
なお、フェロポーチンレベルが高いと生存率が高くなることも示唆されています。

私には難しい内容ではありましたが、読みながら、数(十)年後?乳癌治療にまた新しいアプローチが登場するかもしれないな。と思いました。

http://translationalmedicine.org/content/2/43/43ra56.short

ちなみに同僚はこの文献からヒントを得て、新たな試験を模索、計画しています。
よいアドバイスがありましたら、ぜひお聞かせ下さい。

2012年10月9日火曜日

乳がん検診率~2009年度 当院の現状~

少し前のブログで、兵庫県のマンモグラフィー受診率が低いといった現状のデータがありました。

少し 古いデータになりますが、2009年度に当院 女性看護職員614名(回答率72%)から 
マンモグラフィー検診についてアンケート調査を行いました。

<アンケートからの結果・考察>」
職員全体の17%がマンモグラフィーの検診経験がある。
また、そのうち定期・不定期でも健診を受けている方は63%となった。
乳がんについては身近な病気と感じており、マンモグラフィーについの関心度は高く、
乳がん検診の必要性については88%の職員が必要と感じている。

しかし、実際には検診に行く時間や 検診場所が分からない、検診をうけるきっかけがないといった問題を抱えているといった結果が得られた。

今後の課題としては、当院では20代・30代の若年者が70%を占めているため、若年者が乳がん早期発見の為に必要な時期に検診行動が取れるような教育的アプローチが求められる。
また、職場でも家庭でも中心的な存在である40代50代の職員がみな 自己検診や乳がん検診が受けられるよう、啓蒙活動を行い、検診を受けやすい環境や時間の確保などの体制を整えていく必要がある。
職員健康診断に取り入れる、健康診断をうけるための休みの確保など 具体的なアプローチが求められる。
医療に身近な存在の看護師が予防医学について必要性を理解し、実践していくことで、ひいては一般市民に対しての啓蒙が浸透していくことを期待したい。



2009年当時で乳がんは20人に1人が罹患すると言われていましたが、
今年は16人に1人 と罹患率は年々上昇しています。
まずは、当院の女性職員への啓蒙を行いたいところです。

2010年・2011年、10月に乳がん検診をすすめるポスターを作製し各部署に配布しました。
今年は産休中の為 ポスター配布は行えませんでしたが、復帰したらまた考えたいと思います。


平日に検診を受けられない女性のために、
全国の医療機関とNPO法人J.POSHが協力して毎年10月第3日曜日に乳がん検診マンモグラフィー検査を受診できる環境づくりへの取り組みがあることを知りました。
http://jms-pinkribbon.com/
今年は10月21日(日曜日)です。



2012年10月6日土曜日

神戸ボーンヘルスケア研究会

神戸ボーンヘルスケア研究会 

講師:はやし整形外科 林先生
・AI関連の関節痛・・・各種臨床試験から類推すると、AI固有の副作用は5%くらい。(プラセボ群の割合から推測して加齢に伴う関節症状も実際は多い)
・AIでばね指(腱鞘炎)が増える。ばね指の診断方法のレクチャー。
治療はボルタレンゲル、ロキソニン、ミオナールなど。改善なければ整形外科コンサルト。
ステロイドの腱鞘内注入が有効。
・LH-RHアゴニストで50肩(腱板炎)が増える。
・骨塩減少に対してエルデルカシトール+ボナロンが有効。


講師:佐賀大学 木村先生
・メソトレキセートとゾメタは拮抗。
・パクリとゾメタは相乗効果。
・ゾメタによる抗腫瘍効果
RAS関連タンパクを不活化。
ゾメタがγδTcellを増殖させて、殺細胞効果を高める。
破骨細胞の活性化を阻害。

2012年10月4日木曜日

PTEN

http://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMe1208934

Cowden syndromemultiple hamartomas, high risk of a number of a cancerを特徴とする。
(乳癌発症リスク2550%)
PTENgermline mutationが原因。PTENの機能不全は多くの癌で起っていて、新たな治療のターゲットとして注目されている。
PTENPI3K pathwayregulateして、tumor-suppressive effectを発揮している。PI3Kが活性化されると下流のPIP3が形成されるが、PTENPIP3を脱リン酸化して不活性型のPIP2に変える。なのでPTENがないと、cell growth, survivalの方向に働くし、insulinmetabolic effectを増やしたりする。

Palらの今回の報告。
Cowden syndrome患者でインスリン感受性が増強し、糖負荷試験中もインスリンレベルが低い。しかし血清脂質レベルはインスリン感受性増強に関係しない。Cペプチドの測定からは良好な膵内分泌能が示されている。
研究に参加したCowden syndrome患者はadipose tissueにのみPTEN mRNAの欠損をみた。Skeletal muscle tissue には欠損がなかった。またインスリン感受性が高いのにも関わらずBMIと体脂肪率が高く、adiponectinは低い。通常、血清adiponectin levelはインスリン感受性と正の相関をして、インスリン抵抗性のある肥満患者では低い。
PTEN activityを高めるアプローチがインスリン感受性を下げて、type2DMを増やさないか、今後の検討を要する。

2012年10月3日水曜日

EMILIA試験 

T-DM1の有効性を示したEMILIA試験の2回目の中間解析の結果がNEJMで発表となった。
http://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa1209124?query=featured_home

T-DM1のおさらい
トラスツズマブと微小管重合体阻害剤誘導体のDM1を結合した抗体-薬物複合体。


EMILIA試験のサマリー

対象:HER2陽性の切除不能進行乳癌もしくは転移性乳癌で、前治療にタキサン+ハーセプチンが投与されていることが条件
Lapatinib+capecitabine T-DM1を1対1にランダム化
Lapatinib+capecitabine n=496
T-DM1 N=495

Primary end points: PFS(independent review), OS, Safety
Secondary end points: PFS(investigator-assessed), Objective response rate, time to symptom progression

結果:
PFS  T-DM1・・・9.6ヶ月 vs  Lap+Cape・・・6.4ヶ月
HR 0.65; 95%CI, 0.55-0.77; P<0.001


OS  T-DM1・・・30.9ヶ月 vs Lap+Cape・・・25.1ヶ月
HR 0.68; 95%CI, 0.55-0.85; P<0.001

 
 
 
グレード34の副作用はLap+Cape群で多かった。