2013年10月29日火曜日

がんのチーム医療のABC

昨日は県立看護大学の講堂で、MDアンダーソンキャンサーセンターの上野直人教授の講演を拝聴してきました。

内容は
「がんのチーム医療のABC」
についてです。
ABCとは...

A=Active Care Team (医師、看護師、薬剤師など)
B=Base Support Team(看護師、福祉職、ソーシャルワーカーなど)
C=Comumunity Resource(家族、友人、マスコミ、NPOなど)

環境と患者のニーズにより治療の流れの中で、ABCでサポートしていく。
患者はチームの一員である。。。。

そして、チーム医療により
満足度の高い医療を提供し、医療レベルと、「患者力」を向上させ、医療従事者自身の満足度も向上させる。

パッションに満ち溢れた素晴らしい講演でした。
Nature Review Clinical Oncology 2010


 

2013年10月24日木曜日

Hereditary Diffuse Gastric Cancer Syndrome (HDGC)

・胃癌と乳癌(小葉癌)のハイリスク
・E-カドヘリン(CDH1)遺伝子変異の関与が指摘されている
・常染色体優性遺伝
・以下の場合はHDGCを疑う(リンク先より転記)

1) Two or more cases of diffuse gastric cancer in a family, with at least one diffuse  gastric cancer diagnosed before the age of 50 years.

2) Three or more cases of diffuse gastric cancer in a family diagnosed at any age.

3) An individual diagnosed with diffuse gastric cancer before 35 years of age.

4) An individual diagnosed with both diffuse gastric cancer and lobular breast  cancer.

5) One family member with diffuse gastric cancer and another with either lobular  breast cancer OR signet ring colon cancer.

関連リンク↓
http://cancer.stanford.edu/patient_care/services/geneticCounseling/HDGC.html

2013年7月23日火曜日

男性乳がんレビュー

今日は放射線科治療部との合同カンファレンスでした。
放射線科I先生による男性乳がんレビュー文献(http://annonc.oxfordjournals.org/content/24/6/1434.abstract)のまとめです。




•Introduction
–USでは乳癌全体の0.5-1.0%
–2000/年が診断される
徐々に増加傾向
–Risk factor, 生物学的特性, 予後等をreview
•Methodology
–1987-2012年の20例以上を対象とした英語論文
–Pubmed”male breast cancer/carcinoma”
–723のうち20例未満の報告やreview等を除外
Risk factors
•Table. 1にまとめ
年齢
–USでは女性に比べ5-10
中東や南アジアは同等
遺伝関連
家族歴・BRCA2変異
男性でBRCA2変異+の5-10%が乳癌発症
–US/UKでは男性乳癌の4-14%BRCA2変異+
102例ではBRCA1/2とも所見なし
女性でrisk増とされるPALB2, androgen receptor, CYP17他については明らかではない
エストロゲン/アンドロゲン比関連
クラインフェルター、外因性のエストロゲン/テストステロン
肥満

精巣(上体)炎、前立腺癌のホルモン治療等

生活スタイル関連
運動によりリスクは低下
明らかではない飲酒・白人であること

その他

アフリカで感染性の肝障害が男性乳癌のgenetic risk↑
小規模研究で喫煙が予防的役割(大規模研究では確認されず)
職業的な曝露(電磁波や熱・化学物質等へ)もリスク増?
Biological Characteristics
組織型
–IDC
が多い

–Papillary
がややcommonlobularrare
ホルモン関連
大半はホルモン感受性+
–1973-2005
年のSEERNCI)データベースでは92%ER陽性(女性では78%

•Grade/Her2について
報告①39%grade3(閉経後より多く閉経前より少ない)
報告41症例)73%grade3Her2陽性は45%

その他の報告ではHer2過剰発現は242%

その他の小規模報告
女性に比べp53陰性でp21陽性
女性の場合とp53はほぼ同等という報告もあり
–Kinase inhibitorが特有の役割あるという説も
–Androgen pathway
が女性より活性化している?

–Androgen Receptor
34-95%で陽性

–prolactin receptor
が発癌に関与しているかも?

ゲノム異常もcommon
–BRCA2関連の腫瘍では女性と染色体異常が類似
–EGFR
CCND1ではコピー数が多い(EMSYCPDでは少ない)

–mRNA
発現等を解析することで複数のサブグループがありかつ女性データを元にしたサブグループとも異なることが判明

イタリアの小規模研究では1000ほどの遺伝子につき男女で発現差あり

 性差が臨床応用につながるか?
 Diagnosis presentation and prognosis
進行してから発見されることが多いためより進行期に診断され予後も厳しい
クロアチアの報告では女性は症状出現から3か月以内に診断が58%に対し男性は
29%
スペインの報告では症状出現から診断までの平均は10か月以上(それより早期発見の場合は病期も早期であった)

 病期や年齢を調整すると女性と同等ないし良好な予後とされる
男性の場合は無痛性の乳輪下腫瘤としてしばしば認められる
女性よりもLN陽性で脈管浸潤や乳頭浸潤がcommon
女性と同様、LNの状態が予後に相関する
早期でDCISと診断されればlow/intermediate gradeで遠隔再発は非常に稀
–SEER Study
ではin situで診断されたのは9%のみ(検診MMGないがin situで発見される率は増加)

社会人口統計学的にみた男性の予後因子
黒人や大都市在住でない人(治療の不均等があるため予後不良)
イスラエルの報告ではSephardic(スペイン/ポルトガル系)ユダヤ人の方がashkenazi(ドイツ/ロシア系)よりも予後不良(遺伝的要因か社会的要因かは不明)
若年=予後不良は明らかではない
SEER Studyでは乳癌関連死は既婚者よりも未婚者の方が目立った
•Grade;女性と同様に予後因子
イタリアの報告( 27例)

•Grade2MST72ヶ月 vs grade333ヶ月
カナダの報告(43例)
•Grade25年生存率が58% vs grade345%
その他;女性と同等かは不明(小規模報告)
–Her2
と予後とに関連なしとする報告あり

–Her2
陽性はDFSOS短縮したとの報告もあり

–PgR
陽性が男性で予後因子となるかは不明

脈管侵襲についても不明

その他の小規模報告
–preliminarilyな結果として高リスクと相関との報告
•BRCA1欠損
•MIB-1高値
•p53発現
•p27欠如
•p21p57や核内増殖抗原(PCNA)の過剰発現
•Androgen Receptorの発現
相関しない/予後良好との報告もあり
その他の小規模報告
–Cyclin D1c-mycの過剰発現で予後良好
腫瘍内のaromatase発現で予後良好
–fibrotic focus
HIF-1αの過剰発現とで予後不良

–BRCA2
関連腫瘍で予後不良

Diagnosis diagnostic testing
全体に報告少ない
–USが有用かも?
•20例の報告
–13例でMMGが施行され 6例がill-defined mass,  5例が疑い、2例はwell-defined mass
–14例でUSが施行され13例が描出有用かも?
悪性の鑑別にFNAが有用?
–MRIの有用性は男性では不明
 Treatment local therapy
早期乳癌に対する外科的治療はBCTmastectomy
現在、多くはmodified radical mastectomy
整容性の問題が乏しい
侵襲性の点からlumpectomy
高齢者ではlumpectomy±RTもあるがまとまった報告なし
•SLNB
男性でも複数の報告でfeasible
女性よりも腋窩LN陽性率が高い(63% vs 21%
–78例でSLNB導入後は腋窩再発なし(観察期間中央値28ヶ月)とする報告あり
術後照射
女性の場合と同等の基準
•31例対象で再発は1例のみ(PMRT 16例中)
•5cm以上の腫瘍 or LN陽性4個以上
脈管浸潤目立つ・断端近接などの場合は1-3個陽性でもPMRTがすすめられるとされる 男性固有データはなし
治療成績
トルコ55症例では合併症や他の治療因子を揃えたところ、照射を受けた群でDFSが延長
他のトルコからの小規模報告ではPMRTbenefitなし
•Ontario75例ではPMRTを受けた46例について局所無再発が改善したがOSは変わらず
 Tretment Systemic therapy
データは限定的
•USからの単施設でのretrospectiveな報告
–19442001年の135 
–LN陽性で補助療法追加(多くはAC系)も明らかな傾向なし
トルコからの報告
–19721994年の121
補助療法追加で予後が改善
 どちらの報告からも断定的なことは言えず
男性乳癌でHer2陽性例でのTrastuzumabの有用性を示すデータはない
内分泌療法
いくつかのretroな小規模研究で有用性
•1944-2001年(US) 20mg TAM5年間
•38例が補助療法として内分泌療法(92%TAM
–Recurrence free及びOSが良かった(受けない群に比べ)
中国からの40年に及ぶ単施設72例の報告では内分泌療法が多変量解析での予後因子であった
一方でUS(Veterans)65例でER陽性へのTAMは益なし
 Survivorship issues
•QOLその他
非癌患者との比較(USでの健康調査)
•198人の非癌患者と66人の男性乳癌患者(診断されてから平均12年)との比較
肉体的にも精神的にも乳癌患者の方が悪かった
女性との比較
男性乳癌(84例)では女性(20589例)よりもQOLは良好も男性全体よりは不良とする報告あり
その他
肉体的/精神的な問題から肥満・DM等が生じやすい
治癒後の検査等
男性乳癌既往患者で新規乳癌発症リスクは5%未満
特定の患者はMMGを毎年受けるべきかも?
重複癌について
多施設での研究で3409例中の12.5%が乳癌ではない他の癌を発症
小腸・直腸・膵臓・皮膚(melanoma以外)・前立腺・造血器腫瘍で発症率が高かった
他に男性乳癌では前立腺癌の発症リスク高いとする報告あり
家族への対応等
–BRCA変異のリスク増加があり遺伝カウンセリングが必要(乳癌/卵巣癌の家族歴ある場合は特に)
–BRCAPROなどのツールも有用
男性乳癌患者がいる場合は家族の乳癌リスクが高くなる 特に他の家族が前立腺癌やBRCA関連の癌と診断されている場合

2013年7月19日金曜日

Facebookページ

暑い日が続いていますがいかがお過ごしでしょうか?

リンク先に乳腺外科Facebookページを追加しました。
こちらも是非よろしくお願いします。

2013年5月22日水曜日

化学療法による脱毛

脱毛は患者さんが感じる苦痛の上位でありながら、医療者との認識に差があるようです。(医療者が過小評価していることが多い)
 また、化学療法終了後もなかなか全体に均等に生えてこなかったり、髪質が変化したりして悩まれる方も少なくないのにもかかわらず、その実際なところは明確になっていません。

 ということで、(財)パブリックヘルスリサーチセンターヘルスアウトカムリサーチ支援事業による「乳がん化学療法を経験者に対する脱毛等の美容的問題に関する調査研究」に協力するために、研究への参加を決めました。
 患者さんへは外来でアンケート調査をお願いするかもしれませんが、何卒ご協力よろしくお願い申し上げます。

2013年5月4日土曜日

乳房温存術後の放射線治療

「乳房温存手術後の放射線治療ってホントに必要なんですか?」
と最近続けて質問を受けました。
EBCTCGの有名な論文があります。グラフはリンパ節転移陰性患者さんですが、放射線治療により明らかな再発抑制効果が得られています。
日本乳癌学会のガイドラインでも推奨グレードAです。
http://www.jbcsguideline.jp/category/cq/index/cqid/300101
ということで、特別な理由がない限り「必要」です。


 

2013年4月19日金曜日

乳がん診断前後のアルコール消費と死亡リスクの関係

約23000人の乳がん患者さんを対象としたアメリカの研究。
アルコール消費量と、乳癌死亡リスクには関連がなさそうという最新の論文です。
むしろ、適量は心血管系のイベントを減らす効果あり。

http://jco.ascopubs.org/content/early/2013/04/08/JCO.2012.46.5765.abstract

2013年4月6日土曜日

神戸市乳がん検診

4月と5月の予定が出ています。
以下のページでご確認ください。


http://www.city.kobe.lg.jp/life/health/checkup/shimin/nyugan/

ATLAS試験

http://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736(12)61963-1/abstract
・1996-2005年、36の国から12,894人がリクルートされた。
・このStudyが始まった当初はTAM2年と5年の両方が標準で、AIはまだ標準でなかった。
・53%がER(+)を確認できていない。
・5-14年の再発リスク; 5年投与群で12.2%、10年投与群で15%
・ベネフィットは10-14年で顕著となっていて、おそらくTAMのcarry over effectによる。
・副作用のRR; PEが1.87、 IHDが0.76、endometrial cancerが1.7
・endometrial cacnerの5-14年でのcumulative riskは3.1%でmortalityは0.4%

2013年3月20日水曜日

卒業の時期ですね

3月15日は乳腺外科 常盤麻里子先生の外来最終日、そして送別会でした。
 
4月からは、さらに研究や勉強を重ねられ 今後 ますます ご活躍されることと思います。
 
当院を卒業されるのはとっても寂しいですが、
 
また立派になって  ぜひ 戻ってきてくださいね(笑)
 
月曜日のみ 当院のAブロックで外来におられるそうなので、
 
今後とも よろしくお願いいたします。
 
 




 

2013年2月27日水曜日

ホルモン療法の副作用

薬の副作用は抗癌剤だけではありません。
内分泌治療を行っている患者さんにも副作用はあります。
特徴的なのは、「のぼせ」 「関節痛」 などです。
しかしながら、抗癌剤の副作用に比べたら「軽い」とされ、なかなか人に分かってもらえないという患者さんも多いようです。
昨年末に、タモキシフェンの10年投与の有効性が示されました。(下のリンクを参照ください)
今後このように「長期的な」内分泌療法を行う方が増えてくると思います。つらいと感じたら遠慮せずに相談してください。医師だけでなく、看護師、薬剤師でもかまいません。
なかなかすっきりとした解決法はないのですが、つらさを共有することはできると思います。
http://www.cancerit.jp/20387.html


ホルモン療法の副作用に関するガイドラインのリンクはこちら↓
http://jbcsfpguideline.jp/category3/043.html

2013年2月17日日曜日

業者さんの補整下着相談会にお邪魔しました

乳がん手術後の患者さんの補整について、専門のインナーを取り扱う会社では

補整下着に関して どの様なアドバイスがいただけるのかが気になり、

先日、ワコールの補整下着相談会にお邪魔しました。

http://www.wacoal.jp/remamma/information/consultation.html


 
 
このように、沢山の種類の パットや下着のサンプルがあり、
 
患者さんの好みや 生活に合ったものを提供できるよう、
 
専門のスタッフの方が待機されています。
 
当院にもいくつか 補整下着やパットのサンプルを置いていますが、
 
当院とは比べ物にならないくらい 沢山の種類がありますので、
 
患者さんは安心して相談にいけるのではないかと思います。
 
当日の購入は出来ませんが 試着室もあり ゆっくりと自分にあったものを選ぶことができそうです。
 
 
そして、患者さんの使いやすいものを という点では、新しい商品も開発されています。
 
シリコンパットの場合、夏場の汗などによる ムレなどが気になりますが、
 
今回は、皮膚密着面の温度が快適な温度に保てるというシリコンパットを見せていただきました。
 



 
 
 
 
 
 
 
 
乳房切除に限らず、温存術の場合でも 
 
部分的に補整をしたいところがあれば部分用パットや温存用のシリコンパットがあります。
 


年齢や乳房の大きさ、術式に関わらず 手術を受けられた患者さん皆さんに
 
このような情報が届けられ、女性が女性らしく 術前の笑顔をみることができるよう
 
スタッフも日々勉強中です。



 

2013年2月12日火曜日

EBMとは?

科学的根拠に基づく医療(Evidence-based Medicine, EBM)という言葉をよく耳にすると思います。

科学的根拠とは、「偶然」とか「ひいき目(バイアス)」を極力除いた臨床試験によって示された「真実」のことをいいます。

例えば、「乳癌にAという薬とBという薬のどちらが効くか?」を証明するために、「偶然・ひいき目」を排除した臨床試験がランダム化比較試験です。

 ランダム化比較試験とはA(標準治療)とB(効果が期待される実験的治療)の治療法をランダムに選択し治療を行います。

例えば、5人のうちAの方が効いた人が2人、Bの方が効いた人が3人だった場合、Bの方が有効と言えるでしょうか?

しかし、5000人のうち、Aの方が2000人、Bの方が3000人なら、Bの方がなんとなく効きそうですね。

そうです、臨床試験で有効性を証明するためには多くの患者さんの協力と、それを科学的に証明する統計学という手法が必要になってきます。

 そのランダム化比較試験によって証明された治療法が「標準治療」となるのです。

ノルバデックスなどの術後補助療法のお薬はランダム化試験で有効性が示されていますし、乳房部分切除術+放射線治療と乳房切除術もランダム化試験で生存率の同等性が示されています。

 しかし、多くの書店に並ぶ「がんに効く!〇〇療法」といったたぐいのものは科学的根拠がないものがほとんどではないでしょうか?