2012年10月24日水曜日

本日の化学療法カンファレンス

今日のカンファレンスは、G-CSFの使用方法について、知識の整理と確認をしました。

臨床腫瘍学会のFNガイドラインより。

・FN発症率が20%以上(高リスク)の薬物療法時にはG-CSFの予防投与が推奨される。
 (ただし保険適応なし)
推奨グレード A

・すでに発症したFNに対して一律に治療的なG-CSF投与を行うことは推奨されない。重篤化する危険因子を有する症例において検討することは妥当である。
推奨グレード C2



2012年10月20日土曜日

乳癌におけるandrogen receptor

乳癌の70%がandrogen receptor(+)
AR陽性率
Luminal A 90%以上
Luminal B ~70-90%
TNBC ~10-30%
HER2 ~60%
ER(+)/HER2(+), ER(-)/HER2(+)のどちらでも同じようにAR expressionがみられる。
ER(+)/HER2(+) and ER(+)/HER2(-)ではAR(+)ならgood prognosis。
ER(-)ではAR expressionがHER2 overexpressionと関係している。

ER(-)/HER2(+)の多くにARが発現しているが、TNBCは10-30%と少ない。ER(-)に関しては、AR overexpressionがtumor proliferation↑の方向に働いているかも。
(WNT and HER3 signaling pathwayを通じてWNT7BとHER3をupregulateするらしい)
もしかしたらAR antagonistはHER(-)/AR(+)/HER2(+)に対するHER3 pathwayの新しいターゲットになるかもしれない。


参考文献
http://m.annonc.oxfordjournals.org/content/early/2012/09/27/annonc.mds286.full.html?papetoc#ref-34

2012年10月17日水曜日

Controlling Iron in Breast Cancer

薬剤部の同僚から、教えてもらった文献を紹介します。

"Ferroportin and Iron Regulation in Breast Cancer Progression and Prognosis"

USの Wake Forest University Baptist Medical Center が 2010年「Science」誌に投稿した記事です

Ferroportinは細胞内から鉄を取り除くタンパク質で、腫瘍の発達を遅らせることが可能かもしれない。という予測がされています。

研究チームは800人程の乳癌患者のデータを元にFerroportinレベルと腫瘍との関係性を調査。
その結果、乳房腫瘍ではFerroportinのレベルが、正常な組織よりもはるかに低く、また、進行が速い部位ほどフェロポーチンのレベルが低いことがわかったそうです。
なお、フェロポーチンレベルが高いと生存率が高くなることも示唆されています。

私には難しい内容ではありましたが、読みながら、数(十)年後?乳癌治療にまた新しいアプローチが登場するかもしれないな。と思いました。

http://translationalmedicine.org/content/2/43/43ra56.short

ちなみに同僚はこの文献からヒントを得て、新たな試験を模索、計画しています。
よいアドバイスがありましたら、ぜひお聞かせ下さい。

2012年10月9日火曜日

乳がん検診率~2009年度 当院の現状~

少し前のブログで、兵庫県のマンモグラフィー受診率が低いといった現状のデータがありました。

少し 古いデータになりますが、2009年度に当院 女性看護職員614名(回答率72%)から 
マンモグラフィー検診についてアンケート調査を行いました。

<アンケートからの結果・考察>」
職員全体の17%がマンモグラフィーの検診経験がある。
また、そのうち定期・不定期でも健診を受けている方は63%となった。
乳がんについては身近な病気と感じており、マンモグラフィーについの関心度は高く、
乳がん検診の必要性については88%の職員が必要と感じている。

しかし、実際には検診に行く時間や 検診場所が分からない、検診をうけるきっかけがないといった問題を抱えているといった結果が得られた。

今後の課題としては、当院では20代・30代の若年者が70%を占めているため、若年者が乳がん早期発見の為に必要な時期に検診行動が取れるような教育的アプローチが求められる。
また、職場でも家庭でも中心的な存在である40代50代の職員がみな 自己検診や乳がん検診が受けられるよう、啓蒙活動を行い、検診を受けやすい環境や時間の確保などの体制を整えていく必要がある。
職員健康診断に取り入れる、健康診断をうけるための休みの確保など 具体的なアプローチが求められる。
医療に身近な存在の看護師が予防医学について必要性を理解し、実践していくことで、ひいては一般市民に対しての啓蒙が浸透していくことを期待したい。



2009年当時で乳がんは20人に1人が罹患すると言われていましたが、
今年は16人に1人 と罹患率は年々上昇しています。
まずは、当院の女性職員への啓蒙を行いたいところです。

2010年・2011年、10月に乳がん検診をすすめるポスターを作製し各部署に配布しました。
今年は産休中の為 ポスター配布は行えませんでしたが、復帰したらまた考えたいと思います。


平日に検診を受けられない女性のために、
全国の医療機関とNPO法人J.POSHが協力して毎年10月第3日曜日に乳がん検診マンモグラフィー検査を受診できる環境づくりへの取り組みがあることを知りました。
http://jms-pinkribbon.com/
今年は10月21日(日曜日)です。



2012年10月6日土曜日

神戸ボーンヘルスケア研究会

神戸ボーンヘルスケア研究会 

講師:はやし整形外科 林先生
・AI関連の関節痛・・・各種臨床試験から類推すると、AI固有の副作用は5%くらい。(プラセボ群の割合から推測して加齢に伴う関節症状も実際は多い)
・AIでばね指(腱鞘炎)が増える。ばね指の診断方法のレクチャー。
治療はボルタレンゲル、ロキソニン、ミオナールなど。改善なければ整形外科コンサルト。
ステロイドの腱鞘内注入が有効。
・LH-RHアゴニストで50肩(腱板炎)が増える。
・骨塩減少に対してエルデルカシトール+ボナロンが有効。


講師:佐賀大学 木村先生
・メソトレキセートとゾメタは拮抗。
・パクリとゾメタは相乗効果。
・ゾメタによる抗腫瘍効果
RAS関連タンパクを不活化。
ゾメタがγδTcellを増殖させて、殺細胞効果を高める。
破骨細胞の活性化を阻害。

2012年10月4日木曜日

PTEN

http://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMe1208934

Cowden syndromemultiple hamartomas, high risk of a number of a cancerを特徴とする。
(乳癌発症リスク2550%)
PTENgermline mutationが原因。PTENの機能不全は多くの癌で起っていて、新たな治療のターゲットとして注目されている。
PTENPI3K pathwayregulateして、tumor-suppressive effectを発揮している。PI3Kが活性化されると下流のPIP3が形成されるが、PTENPIP3を脱リン酸化して不活性型のPIP2に変える。なのでPTENがないと、cell growth, survivalの方向に働くし、insulinmetabolic effectを増やしたりする。

Palらの今回の報告。
Cowden syndrome患者でインスリン感受性が増強し、糖負荷試験中もインスリンレベルが低い。しかし血清脂質レベルはインスリン感受性増強に関係しない。Cペプチドの測定からは良好な膵内分泌能が示されている。
研究に参加したCowden syndrome患者はadipose tissueにのみPTEN mRNAの欠損をみた。Skeletal muscle tissue には欠損がなかった。またインスリン感受性が高いのにも関わらずBMIと体脂肪率が高く、adiponectinは低い。通常、血清adiponectin levelはインスリン感受性と正の相関をして、インスリン抵抗性のある肥満患者では低い。
PTEN activityを高めるアプローチがインスリン感受性を下げて、type2DMを増やさないか、今後の検討を要する。

2012年10月3日水曜日

EMILIA試験 

T-DM1の有効性を示したEMILIA試験の2回目の中間解析の結果がNEJMで発表となった。
http://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa1209124?query=featured_home

T-DM1のおさらい
トラスツズマブと微小管重合体阻害剤誘導体のDM1を結合した抗体-薬物複合体。


EMILIA試験のサマリー

対象:HER2陽性の切除不能進行乳癌もしくは転移性乳癌で、前治療にタキサン+ハーセプチンが投与されていることが条件
Lapatinib+capecitabine T-DM1を1対1にランダム化
Lapatinib+capecitabine n=496
T-DM1 N=495

Primary end points: PFS(independent review), OS, Safety
Secondary end points: PFS(investigator-assessed), Objective response rate, time to symptom progression

結果:
PFS  T-DM1・・・9.6ヶ月 vs  Lap+Cape・・・6.4ヶ月
HR 0.65; 95%CI, 0.55-0.77; P<0.001


OS  T-DM1・・・30.9ヶ月 vs Lap+Cape・・・25.1ヶ月
HR 0.68; 95%CI, 0.55-0.85; P<0.001

 
 
 
グレード34の副作用はLap+Cape群で多かった。