放射線科I先生による男性乳がんレビュー文献(http://annonc.oxfordjournals.org/content/24/6/1434.abstract)のまとめです。
•Introduction
–USでは乳癌全体の0.5-1.0%–2000人/年が診断される
–徐々に増加傾向
–Risk factor, 生物学的特性, 予後等をreview
•Methodology
–1987-2012年の20例以上を対象とした英語論文 –Pubmedで”male breast cancer/carcinoma”
–723のうち20例未満の報告やreview等を除外
・Risk factors
•Table. 1にまとめ
•年齢
–USでは女性に比べ5-10才↑
–中東や南アジアは同等
•遺伝関連
–家族歴・BRCA2変異
–男性でBRCA2変異+の5-10%が乳癌発症
–US/UKでは男性乳癌の4-14%にBRCA2変異+
–伊102例ではBRCA1/2とも所見なし
女性でrisk増とされるPALB2, androgen receptor, CYP17他については明らかではない
•エストロゲン/アンドロゲン比関連
–クラインフェルター、外因性のエストロゲン/テストステロン
–肥満
–精巣(上体)炎、前立腺癌のホルモン治療等
•生活スタイル関連
–運動によりリスクは低下
–明らかではない…飲酒・白人であること
–その他
•アフリカで感染性の肝障害が男性乳癌のgenetic risk↑
•小規模研究で喫煙が予防的役割(大規模研究では確認されず)
•職業的な曝露(電磁波や熱・化学物質等へ)もリスク増?
・Biological Characteristics
•組織型
–IDCが多い
–Papillaryがややcommonでlobularがrare
•ホルモン関連
•組織型
–IDCが多い
–Papillaryがややcommonでlobularがrare
–大半はホルモン感受性+
–1973-2005年のSEER(NCI)データベースでは92%がER陽性(女性では78%)
•Grade/Her2について
–報告①39%がgrade3(閉経後より多く閉経前より少ない)
–報告②(41症例)73%がgrade3(Her2陽性は45%)
–その他の報告ではHer2過剰発現は2~42%
•その他の小規模報告
–女性に比べp53陰性でp21陽性
•女性の場合とp53はほぼ同等という報告もあり
–Kinase inhibitorが特有の役割あるという説も
–Androgen pathwayが女性より活性化している?
–Androgen Receptorは34-95%で陽性
–prolactin receptorが発癌に関与しているかも?
•ゲノム異常もcommon
–BRCA2関連の腫瘍では女性と染色体異常が類似
–EGFRやCCND1ではコピー数が多い(EMSYやCPDでは少ない)
–mRNA発現等を解析することで複数のサブグループがありかつ女性データを元にしたサブグループとも異なることが判明
–イタリアの小規模研究では1000ほどの遺伝子につき男女で発現差あり
→ 性差が臨床応用につながるか?
・進行してから発見されることが多いためより進行期に診断され予後も厳しい
–クロアチアの報告では女性は症状出現から3か月以内に診断が58%に対し男性は29%
–スペインの報告では症状出現から診断までの平均は10か月以上(それより早期発見の場合は病期も早期であった)
→病期や年齢を調整すると女性と同等ないし良好な予後とされる
–女性よりもLN陽性で脈管浸潤や乳頭浸潤がcommon
•女性と同様、LNの状態が予後に相関する
–早期でDCISと診断されればlow/intermediate gradeで遠隔再発は非常に稀
–SEER Studyではin situで診断されたのは9%のみ(検診MMGないがin situで発見される率は増加)
•社会人口統計学的にみた男性の予後因子
–黒人や大都市在住でない人(治療の不均等があるため予後不良)
–イスラエルの報告ではSephardic(スペイン/ポルトガル系)ユダヤ人の方がashkenazi(ドイツ/ロシア系)よりも予後不良(遺伝的要因か社会的要因かは不明)
–若年=予後不良は明らかではない
SEER Studyでは乳癌関連死は既婚者よりも未婚者の方が目立った
•Grade;女性と同様に予後因子
–イタリアの報告( 27例)
•Grade2でMSTが72ヶ月 vs grade3で33ヶ月
–カナダの報告(43例)
•Grade2で5年生存率が58% vs grade3で45%
•その他;女性と同等かは不明(小規模報告)
–Her2と予後とに関連なしとする報告あり
–Her2陽性はDFSやOS短縮したとの報告もあり
–PgR陽性が男性で予後因子となるかは不明
–脈管侵襲についても不明
•その他の小規模報告
–preliminarilyな結果として高リスクと相関との報告
•BRCA1欠損
•MIB-1高値
•p53発現
•p27欠如
•p21やp57や核内増殖抗原(PCNA)の過剰発現
•Androgen Receptorの発現
–相関しない/予後良好との報告もあり
•その他の小規模報告
–Cyclin D1とc-mycの過剰発現で予後良好
–腫瘍内のaromatase発現で予後良好
–fibrotic focusとHIF-1αの過剰発現とで予後不良
–BRCA2関連腫瘍で予後不良
・Diagnosis diagnostic testing
•全体に報告少ない
–USが有用かも?
•20例の報告
–13例でMMGが施行され 6例がill-defined mass, 5例が疑い、2例はwell-defined mass
–14例でUSが施行され13例が描出→有用かも?
–悪性の鑑別にFNAが有用?
–MRIの有用性は男性では不明
•早期乳癌に対する外科的治療はBCTとmastectomy
–整容性の問題が乏しい
–侵襲性の点からlumpectomyも
–高齢者ではlumpectomy±RTもあるがまとまった報告なし
•SLNB
–男性でも複数の報告でfeasibleと
–女性よりも腋窩LN陽性率が高い(63% vs 21%)
–78例でSLNB導入後は腋窩再発なし(観察期間中央値28ヶ月)とする報告あり
•術後照射
–女性の場合と同等の基準
•31例対象で再発は1例のみ(PMRT 16例中)
•5cm以上の腫瘍 or LN陽性4個以上
•脈管浸潤目立つ・断端近接などの場合は1-3個陽性でもPMRTがすすめられるとされる ※男性固有データはなし
–治療成績
•トルコ55症例では合併症や他の治療因子を揃えたところ、照射を受けた群でDFSが延長
•他のトルコからの小規模報告ではPMRTでbenefitなし
•Ontarioの75例ではPMRTを受けた46例について局所無再発が改善したがOSは変わらず
•データは限定的
–1944~2001年の135例
–LN陽性で補助療法追加(多くはAC系)も明らかな傾向なし
•トルコからの報告
–1972~1994年の121例
–補助療法追加で予後が改善
→ どちらの報告からも断定的なことは言えず
•男性乳癌でHer2陽性例でのTrastuzumabの有用性を示すデータはない
•内分泌療法
–いくつかのretroな小規模研究で有用性
•1944-2001年(US) 20mg TAMを5年間
•38例が補助療法として内分泌療法(92%がTAM)
–Recurrence free及びOSが良かった(受けない群に比べ)
•中国からの40年に及ぶ単施設72例の報告では内分泌療法が多変量解析での予後因子であった
•一方でUS(Veterans)の65例でER陽性へのTAMは益なし
・Survivorship issues
•QOLその他
–非癌患者との比較(USでの健康調査) •QOLその他
•198人の非癌患者と66人の男性乳癌患者(診断されてから平均12年)との比較
•肉体的にも精神的にも乳癌患者の方が悪かった
–女性との比較
•男性乳癌(84例)では女性(20589例)よりもQOLは良好も男性全体よりは不良とする報告あり
–その他
•肉体的/精神的な問題から肥満・DM等が生じやすい
•治癒後の検査等
–男性乳癌既往患者で新規乳癌発症リスクは5%未満
–特定の患者はMMGを毎年受けるべきかも?
•重複癌について
–多施設での研究で3409例中の12.5%が乳癌ではない他の癌を発症
•小腸・直腸・膵臓・皮膚(melanoma以外)・前立腺・造血器腫瘍で発症率が高かった
–他に男性乳癌では前立腺癌の発症リスク高いとする報告あり
•家族への対応等
–BRCA変異のリスク増加があり遺伝カウンセリングが必要(乳癌/卵巣癌の家族歴ある場合は特に)
–BRCAPROなどのツールも有用
–男性乳癌患者がいる場合は家族の乳癌リスクが高くなる
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