2012年1月1日日曜日

SABCS2011 話題のGeparTrio試験考察

術前化学療法の感受性により薬剤や治療期間を変えることがDFSの延長につながるかどうかを見た試験。

患者: 腫瘍径 T2-T4(腫瘍径4cm以上が6割)、リンパ節転移 N0-3N+が約半数) (35歳以上で、ER/PgR陽性、N0Grade1~2といったLow Riskは除外)

デザイン: まず、TAC2サイクル行い、USで効果判定。
NCの場合・・・NX(ナベルビン/ゼローダ)療法に変更する群とそのままTACを計6サイクル行う群にRandomizeする。
CR/PRの場合・・・TACを計8サイクル行う群と、TAC6サイクルで終了する群にRandomize
TAC-NATAC8サイクルをresponse-guided treatmentTAC6サイクルをconventional treatmentとしている。

結果: 
pCR rateTAC×6 vs TAC-NX, TAC×6 vs TAC×8で差なし。
しかし、DFSOSともresponse-guided treatment (N=987)conventional treatment (N=1025)より有意に延長された。(観察期間の中央値は62ヶ月)
DFS : HR 0.71 (95% CI 0.6-0.85) P<0.001
OS: HR 0.79(95% CI 0.63-0.99) P=0.048
サブグループ解析では、Luminal TypeのみDFSに有意差が出ている。(Her2Non-luminalTNBCでは治療を変えてもDFSの延長なし)

考察:
Luminal TypeでのResponse-guided treatmentの有効性が示された。それだけ乳癌細胞にHeterogeneityがあるということなのだろう。またpCRが予後の指標にならないことも注意。逆にTNBCでは(この試験の)response-guided treatmentでは予後は変わらない。Host側の悪性度に打ち勝つだけのレジメがまだまだ少ないということなのか。

日本ではTAC療法は一般的ではない。当院での術前化学療法の標準はFEC100×4 DOC×4 なのでこのエビデンスの外的妥当性を検討する必要がある。

いずれにしても素晴らしい臨床試験と、その結果であった。