若年乳がん患者において、抗がん剤投与による化学閉経や、妊孕性については非常に重要な問題です。今月のJCOに、卵巣機能保護とGnRHアゴニストに関する論文と、Editorialが掲載されました。
Editorialについての原文はここちら↓
http://jco.ascopubs.org/content/early/2012/01/09/JCO.2011.37.9883
この中でAnn H.Partridgeは以下のようにレビューしている。
卵巣機能保護とGnRHアゴニストに関する論文はいくつかある。
今回JCOに掲載されたMunsterらは、論文(http://jco.ascopubs.org/content/early/2012/01/09/JCO.2011.34.6890)の中で44歳以下の乳がん患者をGnRHアゴニスト(Triptorelin)群とコントロール群にランダム化した。(それぞれ、年齢、ER Status、ホルモン療法の有無、ケモレジメで層別化)
主要評価項目は、月経再開とFSH、インヒビンA、インヒビンBレベル。
結果、両群に差なし。
コントロール群で90%
Triptorelin群で88%の月経再開
再開までの期間も
それぞれ、5ヶ月と5.8ヶ月で差なし。
試験は124人登録予定も、futilityのため49人登録されたところで中止となっている。
その他、ZORO試験やOPTION試験ではホルモン受容体陰性患者を対象としてゴセレリンの卵巣機能保護作用を調べたが、同様にコントロール群との差は認めなかった。
一方、イタリアのDel Mastroらは281人をTriptorelinとコントロール群にランダム化した結果、Triptorelin群において月経再開率が高かったとしている。
また、Badawyらは同様に78人をゴセレリン投与群と非投与群にランダム化し、ゴセレリン投与群で月経再開率が高かった。
これらの結果の相違は、閉経の定義の違い、使用された抗がん剤、タモキシフェン使用の有無などの患者背景の違いなどによるところがあるだろう。
現在、大規模臨床試験であるPOEMS(SWOG0230)が進行中であり、この結果がでれば何らかのadditional informationをもたらしてくれるかもしれない。
そして、最後に将来妊娠を考えている場合は、現在のエビデンスから
”should not rely on GnRH agonist treatment during chemotherapy for preservation of menstrual and ovarian function or fertility"
とし、今後のさらなるStudyの結果を待つ必要があるとしている。