症例 70代女性。 CTで偶然左乳房腫瘤を指摘された。生検でDiabetic Mastopathyと診断。
#臨床像
・糖尿病がある。
・palpable, firm-to-hard tumor
・マンモグラフィー所見: FADや時に構築の乱れを呈すことがある。
・超音波所見: 限局的な乳腺組織の低エコー像。境界は不明瞭なことが多い。基本的に前・後方境界線の断裂は認めない。硬癌や浸潤性小葉癌との鑑別が重要。
・細胞診でなく生検で確認する必要あり。
#病理組織像
・高度の線維化
・小葉・乳管・血管周囲のリンパ球浸潤
・筋線維芽細胞の出現 など
#乳癌取り扱い規約内の乳腺線維症(Fibrous Disease)の中に含まれる。
#治療と予後
・基本的に経過観察。
・癌へ進展したというエビデンスはない。
2012年1月25日水曜日
2012年1月22日日曜日
第7回神戸ABCM
昨日、1月21日、ポートピアホテルにて第7回神戸ABCMが開かれました。
バーチャル症例の治療について、2チームに分れ討論を行う会です。
今回のバーチャル症例
45歳 女性 閉経前
乳房温存術後
腋窩リンパ節郭清後でリンパ節転移 1/10
浸潤性乳管癌
腫瘍径 2cm
Grade2、脈管侵襲なし
ER90%、PgR90%、 Her2(-)、 Ki67 10%
この症例について、内分泌療法に化学療法を追加するかどうかというのが、テーマです。
もちろん答えはありませんが、いつもながら白熱した討論となりました。
また、その後は岩手医大の柏葉先生の特別講演で、とても勉強になる1日でした。
バーチャル症例の治療について、2チームに分れ討論を行う会です。
今回のバーチャル症例
45歳 女性 閉経前
乳房温存術後
腋窩リンパ節郭清後でリンパ節転移 1/10
浸潤性乳管癌
腫瘍径 2cm
Grade2、脈管侵襲なし
ER90%、PgR90%、 Her2(-)、 Ki67 10%
この症例について、内分泌療法に化学療法を追加するかどうかというのが、テーマです。
もちろん答えはありませんが、いつもながら白熱した討論となりました。
また、その後は岩手医大の柏葉先生の特別講演で、とても勉強になる1日でした。
2012年1月18日水曜日
抗がん剤による化学閉経とGnRHアゴニスト使用について
若年乳がん患者において、抗がん剤投与による化学閉経や、妊孕性については非常に重要な問題です。今月のJCOに、卵巣機能保護とGnRHアゴニストに関する論文と、Editorialが掲載されました。
Editorialについての原文はここちら↓
http://jco.ascopubs.org/content/early/2012/01/09/JCO.2011.37.9883
この中でAnn H.Partridgeは以下のようにレビューしている。
卵巣機能保護とGnRHアゴニストに関する論文はいくつかある。
今回JCOに掲載されたMunsterらは、論文(http://jco.ascopubs.org/content/early/2012/01/09/JCO.2011.34.6890)の中で44歳以下の乳がん患者をGnRHアゴニスト(Triptorelin)群とコントロール群にランダム化した。(それぞれ、年齢、ER Status、ホルモン療法の有無、ケモレジメで層別化)
主要評価項目は、月経再開とFSH、インヒビンA、インヒビンBレベル。
結果、両群に差なし。
コントロール群で90%
Triptorelin群で88%の月経再開
再開までの期間も
それぞれ、5ヶ月と5.8ヶ月で差なし。
試験は124人登録予定も、futilityのため49人登録されたところで中止となっている。
その他、ZORO試験やOPTION試験ではホルモン受容体陰性患者を対象としてゴセレリンの卵巣機能保護作用を調べたが、同様にコントロール群との差は認めなかった。
一方、イタリアのDel Mastroらは281人をTriptorelinとコントロール群にランダム化した結果、Triptorelin群において月経再開率が高かったとしている。
また、Badawyらは同様に78人をゴセレリン投与群と非投与群にランダム化し、ゴセレリン投与群で月経再開率が高かった。
これらの結果の相違は、閉経の定義の違い、使用された抗がん剤、タモキシフェン使用の有無などの患者背景の違いなどによるところがあるだろう。
現在、大規模臨床試験であるPOEMS(SWOG0230)が進行中であり、この結果がでれば何らかのadditional informationをもたらしてくれるかもしれない。
そして、最後に将来妊娠を考えている場合は、現在のエビデンスから
”should not rely on GnRH agonist treatment during chemotherapy for preservation of menstrual and ovarian function or fertility"
とし、今後のさらなるStudyの結果を待つ必要があるとしている。
Editorialについての原文はここちら↓
http://jco.ascopubs.org/content/early/2012/01/09/JCO.2011.37.9883
この中でAnn H.Partridgeは以下のようにレビューしている。
卵巣機能保護とGnRHアゴニストに関する論文はいくつかある。
今回JCOに掲載されたMunsterらは、論文(http://jco.ascopubs.org/content/early/2012/01/09/JCO.2011.34.6890)の中で44歳以下の乳がん患者をGnRHアゴニスト(Triptorelin)群とコントロール群にランダム化した。(それぞれ、年齢、ER Status、ホルモン療法の有無、ケモレジメで層別化)
主要評価項目は、月経再開とFSH、インヒビンA、インヒビンBレベル。
結果、両群に差なし。
コントロール群で90%
Triptorelin群で88%の月経再開
再開までの期間も
それぞれ、5ヶ月と5.8ヶ月で差なし。
試験は124人登録予定も、futilityのため49人登録されたところで中止となっている。
その他、ZORO試験やOPTION試験ではホルモン受容体陰性患者を対象としてゴセレリンの卵巣機能保護作用を調べたが、同様にコントロール群との差は認めなかった。
一方、イタリアのDel Mastroらは281人をTriptorelinとコントロール群にランダム化した結果、Triptorelin群において月経再開率が高かったとしている。
また、Badawyらは同様に78人をゴセレリン投与群と非投与群にランダム化し、ゴセレリン投与群で月経再開率が高かった。
これらの結果の相違は、閉経の定義の違い、使用された抗がん剤、タモキシフェン使用の有無などの患者背景の違いなどによるところがあるだろう。
現在、大規模臨床試験であるPOEMS(SWOG0230)が進行中であり、この結果がでれば何らかのadditional informationをもたらしてくれるかもしれない。
そして、最後に将来妊娠を考えている場合は、現在のエビデンスから
”should not rely on GnRH agonist treatment during chemotherapy for preservation of menstrual and ovarian function or fertility"
とし、今後のさらなるStudyの結果を待つ必要があるとしている。
2012年1月12日木曜日
マンモトーム検査のお知らせ
2012年1月11日水曜日
化学療法モーニングカンファレンス
・肝障害時の抗がん剤投与について症例検討
・イメンド(制吐剤)の注射薬が出た。乳がん領域ではアンスラサイクリンを含むレジメにおいてイメンドが使われている。注射剤の方が内服管理が不要なため、患者さんへのメリットが大きいだろう。血管痛が問題となることが報告されており、今後使用可能となったときには注意が必要。
この注射剤に関するリンクはこちら↓
http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/all/series/drug/update/201111/522384.html
・イメンド(制吐剤)の注射薬が出た。乳がん領域ではアンスラサイクリンを含むレジメにおいてイメンドが使われている。注射剤の方が内服管理が不要なため、患者さんへのメリットが大きいだろう。血管痛が問題となることが報告されており、今後使用可能となったときには注意が必要。
この注射剤に関するリンクはこちら↓
http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/all/series/drug/update/201111/522384.html
2012年1月7日土曜日
臨床試験におけるKi67レビュー
・PACS01
ER陽性乳癌のAdjuvant Chemotherapy
Ki67 High群でFEC×3→ドセタキセル > FEC×6
ドセタキセルの追加効果高い可能性
・BCIRG001
ER陽性かつHer2陽性 or Ki67 HighにおけるAdjuvant Chemotherapy
TAC > FAC
・IBCSGTⅧ、Ⅸ
N(-)、HR陽性で、ホルモン療法にCMFを上乗せするのがよいかどうかのpredictive valueに
はならず。
・BIG1-98
Ki67 Highではレトロゾール>タモキシフェン
Ki67 Lowではレトロゾール≒タモキシフェン
・IMPACT Trial
術前ホルモン療法開始2週間後のKi67値が予後と相関
参考文献:
・Ki67 in breast cancer : prognostic and predictive potential
ER陽性乳癌のAdjuvant Chemotherapy
Ki67 High群でFEC×3→ドセタキセル > FEC×6
ドセタキセルの追加効果高い可能性
・BCIRG001
ER陽性かつHer2陽性 or Ki67 HighにおけるAdjuvant Chemotherapy
TAC > FAC
・IBCSGTⅧ、Ⅸ
N(-)、HR陽性で、ホルモン療法にCMFを上乗せするのがよいかどうかのpredictive valueに
はならず。
・BIG1-98
Ki67 Highではレトロゾール>タモキシフェン
Ki67 Lowではレトロゾール≒タモキシフェン
・IMPACT Trial
術前ホルモン療法開始2週間後のKi67値が予後と相関
参考文献:
・Ki67 in breast cancer : prognostic and predictive potential
・Assessment of Ki67 in breast cancer: Recommendations from the international Ki67 in breast cancer working group
J Natl Cancer Inst. 2011 Nov 16;103(22):1656-64. Epub 2011 Sep 29.
2012年1月4日水曜日
Nipple-sparing mastectomy - is it worth the risk? (Nature Reviews 2011 vol 8 no.12のperspectiveより)
Nature Reviews Clinical Oncology (http://www.nature.com/nrc/index.html)に掲載されたイタリアの形成外科医 Jean-Yves Petit氏の記事。
彼らの施設では過去10年間で乳房切除率が23%から28%に増加しているが、これはMRIの普及により微小病変の検出率が上がったことに由来すると思われる。
同施設でnipple-sparig mastectomy(NSM)を受けた934人のうち、観察期間の中央値50ヶ月で104人(11.1%)にイベントあり。
浸潤がんでの5年生存率は95.5%
772人の浸潤がんのうち、乳房内再発率は3.6%、乳頭乳輪内再発は0.8%
非浸潤がんでの乳房内再発は4.9%、乳頭乳輪内再発は2.9%
乳頭乳輪への術中照射を併用した76人には局所再発がなく、彼はその有用性を主張している。
局所再発のリスク因子としては
高グレード、Her2陽性
非浸潤がんでは、45歳未満、ホルモン受容体陰性、高Ki67もリスク因子。
術前に乳頭乳輪への浸潤がないか、MMG、MRIで正確に評価することが重要。
また、術中迅速でのFalse Negativeが8.2%あることも考慮しておくべき。
手術の合併症である、皮弁壊死、乳頭乳輪壊死のリスクとしては皮弁の厚さの他に、大きい乳房や、下垂乳房で挙げられる。
乳頭乳輪直下を剥離するときの厚さは5mm以上がよい。
最新の乳癌診療ガイドラインでの nipple-sparing mastectomy (乳頭乳輪温存乳房切除術)に関する記載はこちら ↓
https://www.jbcsguideline.jp/category/cq/index/cqid/200601
当科でも、術前に造影MRIで正確な広がり診断を行い、形成外科と連携し適応について適宜カンファレンスしています。
彼らの施設では過去10年間で乳房切除率が23%から28%に増加しているが、これはMRIの普及により微小病変の検出率が上がったことに由来すると思われる。
同施設でnipple-sparig mastectomy(NSM)を受けた934人のうち、観察期間の中央値50ヶ月で104人(11.1%)にイベントあり。
浸潤がんでの5年生存率は95.5%
772人の浸潤がんのうち、乳房内再発率は3.6%、乳頭乳輪内再発は0.8%
非浸潤がんでの乳房内再発は4.9%、乳頭乳輪内再発は2.9%
乳頭乳輪への術中照射を併用した76人には局所再発がなく、彼はその有用性を主張している。
局所再発のリスク因子としては
高グレード、Her2陽性
非浸潤がんでは、45歳未満、ホルモン受容体陰性、高Ki67もリスク因子。
術前に乳頭乳輪への浸潤がないか、MMG、MRIで正確に評価することが重要。
また、術中迅速でのFalse Negativeが8.2%あることも考慮しておくべき。
手術の合併症である、皮弁壊死、乳頭乳輪壊死のリスクとしては皮弁の厚さの他に、大きい乳房や、下垂乳房で挙げられる。
乳頭乳輪直下を剥離するときの厚さは5mm以上がよい。
最新の乳癌診療ガイドラインでの nipple-sparing mastectomy (乳頭乳輪温存乳房切除術)に関する記載はこちら ↓
https://www.jbcsguideline.jp/category/cq/index/cqid/200601
当科でも、術前に造影MRIで正確な広がり診断を行い、形成外科と連携し適応について適宜カンファレンスしています。
2012年1月1日日曜日
SABCS2011 話題のGeparTrio試験考察
術前化学療法の感受性により薬剤や治療期間を変えることがDFSの延長につながるかどうかを見た試験。
患者: 腫瘍径 T2-T4(腫瘍径4cm以上が6割)、リンパ節転移 N0-3(N+が約半数) (35歳以上で、ER/PgR陽性、N0、Grade1~2といったLow Riskは除外)
デザイン: まず、TACを2サイクル行い、USで効果判定。
NCの場合・・・NX(ナベルビン/ゼローダ)療法に変更する群とそのままTACを計6サイクル行う群にRandomizeする。
CR/PRの場合・・・TACを計8サイクル行う群と、TAC6サイクルで終了する群にRandomize。
*TAC-NAとTAC8サイクルをresponse-guided treatment、TAC6サイクルをconventional treatmentとしている。
結果:
pCR rateはTAC×6 vs TAC-NX, TAC×6 vs TAC×8で差なし。
しかし、DFS、OSともresponse-guided treatment (N=987)がconventional treatment (N=1025)より有意に延長された。(観察期間の中央値は62ヶ月)
DFS : HR 0.71 (95% CI 0.6-0.85) P<0.001
OS: HR 0.79(95% CI 0.63-0.99) P=0.048
サブグループ解析では、Luminal TypeのみDFSに有意差が出ている。(Her2+Non-luminalとTNBCでは治療を変えてもDFSの延長なし)
考察:
Luminal TypeでのResponse-guided treatmentの有効性が示された。それだけ乳癌細胞にHeterogeneityがあるということなのだろう。またpCRが予後の指標にならないことも注意。逆にTNBCでは(この試験の)response-guided treatmentでは予後は変わらない。Host側の悪性度に打ち勝つだけのレジメがまだまだ少ないということなのか。
日本ではTAC療法は一般的ではない。当院での術前化学療法の標準はFEC100×4 →DOC×4 なのでこのエビデンスの外的妥当性を検討する必要がある。
いずれにしても素晴らしい臨床試験と、その結果であった。
患者: 腫瘍径 T2-T4(腫瘍径4cm以上が6割)、リンパ節転移 N0-3(N+が約半数) (35歳以上で、ER/PgR陽性、N0、Grade1~2といったLow Riskは除外)
デザイン: まず、TACを2サイクル行い、USで効果判定。
NCの場合・・・NX(ナベルビン/ゼローダ)療法に変更する群とそのままTACを計6サイクル行う群にRandomizeする。
CR/PRの場合・・・TACを計8サイクル行う群と、TAC6サイクルで終了する群にRandomize。
*TAC-NAとTAC8サイクルをresponse-guided treatment、TAC6サイクルをconventional treatmentとしている。
結果:
pCR rateはTAC×6 vs TAC-NX, TAC×6 vs TAC×8で差なし。
しかし、DFS、OSともresponse-guided treatment (N=987)がconventional treatment (N=1025)より有意に延長された。(観察期間の中央値は62ヶ月)
DFS : HR 0.71 (95% CI 0.6-0.85) P<0.001
OS: HR 0.79(95% CI 0.63-0.99) P=0.048
サブグループ解析では、Luminal TypeのみDFSに有意差が出ている。(Her2+Non-luminalとTNBCでは治療を変えてもDFSの延長なし)
考察:
Luminal TypeでのResponse-guided treatmentの有効性が示された。それだけ乳癌細胞にHeterogeneityがあるということなのだろう。またpCRが予後の指標にならないことも注意。逆にTNBCでは(この試験の)response-guided treatmentでは予後は変わらない。Host側の悪性度に打ち勝つだけのレジメがまだまだ少ないということなのか。
日本ではTAC療法は一般的ではない。当院での術前化学療法の標準はFEC100×4 →DOC×4 なのでこのエビデンスの外的妥当性を検討する必要がある。
いずれにしても素晴らしい臨床試験と、その結果であった。
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