2017年2月20日月曜日

手術手袋を用いた圧迫療法による末梢神経障害予防

大阪日赤病院の露木先生が主任研究者として発案された研究の結果です。当院や西市民病院の患者さんにもご協力いただきました。現在は次のステップの研究を当院でも行っております。
(ご協力いただいた患者さんには、心よりお礼申し上げます。)

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/27620884


目的
アブラキサンによる末梢神経障害を予防するための、手術手袋による圧迫療法の有用性を検討した。

方法
260/m2のアブラキサン投与が必要な患者が対象。患者にフィットするサイズよりワンサイズ小さい外科手術用手袋を利き手に2重に装着してもらった(装着時間90分)。
利き手ではない手には何も装着せず、コントロールとして、末梢神経障害(PN)の発症割合を評価した。(評価項目はCTCAE ver4patient neurotoxicity questionnaire、各サイクルの初めに評価した
またサーモグラフィを用いて、圧迫療法直後の指先の温度も測定した。

結果
2013年から2016年までに43人の患者が登録され、42人が評価された。グレード2以上の感覚性末梢神経障害と運動性末梢神経障害は手袋装着側で有意に低下していた。(sensory neuropathy 21.4 vs. 76.1 %; motor neuropathy 26.2 vs. 57.1 %
手袋の装着による圧迫に耐えられない患者はいなかった。手袋装着側の手では化学療法前の指先体温が有意に低下していた。

結論

手術手袋による圧迫療法は、指先の微小循環を低下させることで、アブラキサンに起因する末梢神経障害を軽減する可能性がある。

2017年2月12日日曜日

早期緩和ケアの有用性

Early Palliative Care for Patients with Metastatic Non–Small-Cell Lung Cancer

主要評価項目ではないが、早期緩和ケアが生存期間を延ばすことを示した有名な論文。

P
転移性非小細胞性肺がん
診断から8週間以内に登録
ECOG PS 0,1, or 2

E
早期緩和ケア介入群
資格を持った緩和ケア医とadvanced practice nurseに登録後3週間以内に面談。その後は少なくとも月に1回、死亡まで外来で診察をうけた。追加の診察に関しては、患者、腫瘍医、緩和ケア提供者の判断で行った。
外来での緩和ケアに関する一般的なガイドラインはNational Consensus Project for Quality Palliative Careが適応された。

C
スタンダードケア群
患者あるいは家族、腫瘍医の要望がなければ、緩和ケア科の診察ははい。

O
主要評価項目
ベースラインから12週間目のQoLtrial outcome index; Trial Outcome IndexFACT-L質問票のうち身体症状、活動状況及びその他の心配な点のスコアを総合したもの)の変化。
FACT-L, Functional Assessment of Cancer Therapy-Lung)  
MoodHADS(Hospital Anxiety and Depression Scale)PHQ-9(Patient Health Questionnaire 9)で評価された。
*medium effect size 0.5SD2群間の差を有意とし、検出率80%としてサンプルサイズは120とされた


RESULT
151人の患者が無作為化された。うち27人が12週目までに死亡し、残りの患者のうち86%の107人が12週目での評価が可能であった。
早期緩和ケア介入群は非介入群と比べて、12週目のFACT-Lスコアが高くなっていた(スコアが高い方がQoL良好, 98.0 vs. 91.5; P=0.03)
うつ症状は早期緩和ケア群で減少していた。(16% vs. 38%, P=0.01)
生存期間は早期緩和ケア群で有意に延長していた。(11.6 months vs. 8.9 months, P=0.02).