明けましておめでとうございます。
日々進歩する乳癌診療の中で、昨年もいろいろな研究結果がアップデートされ、新しい治療薬が我々の手元に届きました。今年も近いうちにいくつかの新規薬剤が保険診療で使用可能となる予定です。一昔前までよく言われていた「ドラッグ・ラグ」はほとんど解消されつつあるのではないでしょうか。
また外科治療の面ではインプラントと新しいタイプの組織拡張器がついに保険適応となりました。従来から広背筋や腹直筋等の自家組織による乳房再建しか保険で手術が行えていませんでしたが、現在はそれぞれのメリット・デメリットを考えて手術ができるようになりました。治療の選択肢が増えるということはとても良いことです。
一方で、従来から正しいと思われていたことが、もしかしたらそうではないかもしれないと言われるようになったこともあります。そのひとつがマンモグラフィー検診です。ある研究によれば、今まで検診によって死亡率が下がっていたように見えたのは実は治療の進歩によることが大きくて、実際マンモグラフィー検診による死亡率軽減効果はほとんどないというものです。確かに検診で見つかる早期の癌はありますが、その反面、不必要な検査や手術などが増えてしまい、過剰診療につながってしまう不利益が多いために、税金を使っての公的検診は不要という意見も出ています。
このマンモグラフィー検診の是非に関する議論についてはまだ決着がついていないため、どちらが正しいかということは現時点では言えませんが、過剰診療につながることや、不要な精密検査を強いられる患者さんの精神的負担を無視できないということは、私も間違いないと思っています。
それでは、「神戸乳癌死0プロジェクト」達成するためにはどうしたらよいでしょうか?なかなか難しいですが、そのひとつは正しい知識をひとりひとりが持って、市民全体で乳癌という病気に取り組んでいくことだと思っています。
例え検診を受けていなくても、しこりや乳頭から血が出るなどの症状があれば、すぐに受診する。まわりにそういう方がいたら受診を勧める。遺伝性乳癌についての正しい知識を広めて、予防策を講ずる。遺伝性乳癌ではないにしても乳癌発症リスクとは何かを知って、自ら検診へ行く。若いうちからのそのような教育も大事かもしれません。そして、例え再発や転移を来たしても、普通の生活が普通に行える体制作り・・・・
まだまだ道のりは長いかもしれませんが、今年も一歩ずつ、一歩ずつ前へ進んでいきたいと思います。
本年も、どうぞよろしくお願い申し上げます。