2014年10月7日火曜日

乳癌術後の不妊治療は再発リスクを高めるか?

外来での患者さんからのクリニカルクエスチョンをPECOで考える。

P:ER陽性早期乳癌患者
E:術後すぐに不妊治療を行った場合
C:術後不妊治療を行わない場合
O:再発リスクに差があるか

Fertility treatment breast cancer recurrence でpub Med検索

文献① エビデンスレベル3
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24055050
P:妊孕性温存を希望する、45歳以下のStage3以下乳癌の女性78人
E:不妊治療(61人、1サイクルの卵巣刺激、17人2サイクル)
C:なし
O:中央値58.5ヶ月のフォローで再発2人

文献② エビデンスレベル2a
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/18509175
P:215人の乳癌患者
E:79人 補助化学療法前にゴナドトロピン+レトロゾール
C:136人 不妊治療なし
O:再発リスクに有意差なし

高いエビデンスレベルのものはなく、患者背景もはっきり見れていないので何ともいえず。
ただ不妊治療によって、極端に再発リスクが上がることはなさそう。
それよりAdjuvant治療ができないことによる再発リスクの上昇がどれくらいか、絶対リスクを考えた上で患者さんにお話しする必要がある。

2014年5月14日水曜日

神戸市がん対策推進条例

以下のリンクは神戸市がん対策推進条例です。
実は今年の4月1日から施行されています。
市民である我々も、意識を高めていきましょう。
今や国民の2人に1人ががんになる時代。
皆で「がんになっても普通に暮らせる神戸」を目指しませんか?


http://ganseisaku.net/pdf/law/20140401kobe.pdf

2014年4月20日日曜日

mTOR阻害剤まとめ


mTOR阻害剤まとめ
Horizon trial (P-) N1112

閉経後、LABC or MBCに対する1st-line

LET+Temsirolims vs LET+Placebo

Primary endpoint : PFS

LET+TEMSR・・・9.0カ月

LET+Placebo・・・8.9カ月

(HR 0.90, 95% CI 0.76-1.07, p=0.25), 有意差なし

Secondary endpoint : OSも有意差なし

 

②TAMRAD (P=) N=111

閉経後、advanced breast caに対する2nd-line (1st-lineAI)

TAM+everolims vs TAM

Primary endpoint : 6ヶ月時点でのclincal benefit rate

TAM+EVE 61% > TAM 42% (p=0.045)

 

③BOLERO2(P=) N=724

閉経後、NSAI耐性のAdvanced

EXE+EVE vs EXE+PBO

Primary endpoint : PFS

Central assessment PFS

EXE+EVE・・・11ヶ月

EXEPBO・・・4.1ヶ月

(HR 0.38 95% CI 0.31-0.48, p=0.0001)

Secondary endpoint:OSは差なし

 




2014年4月14日月曜日

エベロリムスについて

ホルモン陽性乳癌でまた一つ新しいお薬が使えるようになりました。
ただし効果と副作用、コストなどの観点からどのような患者さんに使うのが適しているかまだ未解決の部分が多いです。
当院ではカンファレンスで慎重に協議したうえで、患者さんに提示する方針としています。
https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/all/cancernavi/news/201403/535491.html

2014年3月24日月曜日

がん診療連携オープンカンファレンス

先日「患者さんと共に歩む乳癌診療」という題で、オープンカンファレンスでお話をさせていただきました。
ご出席いただいた皆様ありがとうございました。



講演の中でもお話しましたが、

My  Mission(使命):
 目の前の患者さんの声に耳を傾け、誠実に治療する。そして未来の患者さんにとって有益な臨床研究に貢献すること。

My Vision(夢):
神戸から乳癌で亡くなる人を0にする。



です。

これからもがんばりますので、よろしくお願いします。

2014年1月1日水曜日

明けましておめでとうございます。


明けましておめでとうございます。
 
  謹んで新年のご挨拶を申し上げます。

日々進歩する乳癌診療の中で、昨年もいろいろな研究結果がアップデートされ、新しい治療薬が我々の手元に届きました。今年も近いうちにいくつかの新規薬剤が保険診療で使用可能となる予定です。一昔前までよく言われていた「ドラッグ・ラグ」はほとんど解消されつつあるのではないでしょうか。

また外科治療の面ではインプラントと新しいタイプの組織拡張器がついに保険適応となりました。従来から広背筋や腹直筋等の自家組織による乳房再建しか保険で手術が行えていませんでしたが、現在はそれぞれのメリット・デメリットを考えて手術ができるようになりました。治療の選択肢が増えるということはとても良いことです。

一方で、従来から正しいと思われていたことが、もしかしたらそうではないかもしれないと言われるようになったこともあります。そのひとつがマンモグラフィー検診です。ある研究によれば、今まで検診によって死亡率が下がっていたように見えたのは実は治療の進歩によることが大きくて、実際マンモグラフィー検診による死亡率軽減効果はほとんどないというものです。確かに検診で見つかる早期の癌はありますが、その反面、不必要な検査や手術などが増えてしまい、過剰診療につながってしまう不利益が多いために、税金を使っての公的検診は不要という意見も出ています。

このマンモグラフィー検診の是非に関する議論についてはまだ決着がついていないため、どちらが正しいかということは現時点では言えませんが、過剰診療につながることや、不要な精密検査を強いられる患者さんの精神的負担を無視できないということは、私も間違いないと思っています。

それでは、「神戸乳癌死0プロジェクト」達成するためにはどうしたらよいでしょうか?なかなか難しいですが、そのひとつは正しい知識をひとりひとりが持って、市民全体で乳癌という病気に取り組んでいくことだと思っています。

例え検診を受けていなくても、しこりや乳頭から血が出るなどの症状があれば、すぐに受診する。まわりにそういう方がいたら受診を勧める。遺伝性乳癌についての正しい知識を広めて、予防策を講ずる。遺伝性乳癌ではないにしても乳癌発症リスクとは何かを知って、自ら検診へ行く。若いうちからのそのような教育も大事かもしれません。そして、例え再発や転移を来たしても、普通の生活が普通に行える体制作り・・・・

まだまだ道のりは長いかもしれませんが、今年も一歩ずつ、一歩ずつ前へ進んでいきたいと思います。

 

本年も、どうぞよろしくお願い申し上げます。